静岡点ED 画像
先日Twitterでも呟きましたがネタバレ防止のため今後Blogにて海外鯖ストーリーの考察、感想記事を作っていきたいと思います。(自分としても後から見直す際、楽ですので)
今回の記事は「静风点」イベントEDラストに表示される文章についてです。

※本記事はイベント「静风点」のネタバレが含まれています。
また本記事には執筆者による考察が含まれており、後のストーリー展開によって内容に誤りが発生する可能性があります。







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文内容:
Wir、im fernen Vaterland geboren、Nahmen nichts als Hass im Herzen mit. 
Doch wir haben die Heimat nicht verloren Uns're Heimat ist heute vor G&K



結論から言いますと、この文章は「国際旅団」
で作られたLied der Internationalen Brigaden」という歌の一節となります。(最後のみG&Kと変えてある)


我々は遠い祖国に生まれ、憎しみのみを胸に抱いていた。
しかし、我々は祖国を失ってはいない。
我々の祖国は今日からマドリードなのだから。





国際旅団とは

国大旅団
国際旅団とは1936年、当時内戦中のスペインでスペイン共和国政府(第二共和政スペイン)に所属していた外国人義勇兵部隊です。

1936年~39年においてスペイン国内は左派の人民政府軍フランシスコ・フランコ率いる右派の反乱軍による内戦が繰り広げられました。
人民政府側は反ファシスト・共産主義のメキシコやソ連が支援を、一方反乱軍側はファシスト・反共主義のイタリア&ドイツが支援する代理戦争となり、戦車、爆撃機といった最新鋭兵器が使用され、ゲルニカ爆撃に代表される虐殺行為も数多く行われる……まさに第二次世界大戦の前哨戦といえる戦いです。
崩れ落ちる兵士
有名な「崩れ落ちる兵士」


国際旅団はこの内戦中、政府軍援助の名目でコミンテルンによって組織された部隊です。内戦期間を通じ50か国から延べ6万人が参加し、マドリード包囲戦、グアダラハラの戦い、そして内戦最大の戦いであるエブロ川の戦いなどに従軍。反乱軍に劣る政府軍には貴重な戦力でした。
(スペイン軍主力は反乱軍指導者のフランコ側へついたため、政府軍は戦力的に劣っていた)

しかし戦局不利な状況の中、人民政府は外国の圧力を受け1938年に国際旅団を解体。(ソ連とナチスドイツ接近の影響も大きかったとされます)この時までに全体の20%近い1万人以上が戦死していました。
最終的に内戦は反乱軍が勝利、フランコによる独裁政権樹立へと繋がっていきます。



……戦後、イギリスやアメリカに帰国した義勇兵のうち元の職につけたものは一割もいなかったとされます。彼らは「危険な共産主義者」と見なされ、冷戦後の赤狩りも含め多くの弾圧を受けました。
更にスペインの隣国たるフランスへ帰国した人へはフランス陥落によるナチスの弾圧が、東欧諸国へ帰国した人は味方であったはずのソ連政府から「トロツキスト」のレッテルを張られ粛清されました。
彼らの地獄は戦後になっても続いたのです。




前線ストーリーとの関連性

EDの最後になぜ彼らの歌が引用されたのか……
それは国際旅団の行く末がG&K、ひいては指揮官・アンジェの未来を暗示しているた……私はそう推測してしまいます。

ここで一旦イベントストーリーの解説をさせて貰います。
「静风点」はパラデウスに拉致されたアンジェの救出を主軸としてストーリーが進みます。
そしてその中、グリフィンから指揮官へ「クルーガー達を助ける代わりにアンジェを見捨てろ」と指示が出されます。
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我々は時として犠牲を払わなければならない。
これは、大人が向き合わなければならない現実だ。
-グリフィン-


当然ながら指揮官は無視しますし、プレイヤーからしても
「パラデウスに囚われているアンジェ」
「東独国境守備隊に拘束されたクルーガー達」

この二つの救出に相関関係が見えず、彼の指示はまるで不可解に思えます……



そしてイベント終盤、アンジェより通信が入ってきます。
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状況が変わった、指揮官。
「彼」の目的はパラデウスを消し去ることではない。
「彼」はウィリアムを……自らの支配下に置こうとしている。
……私はそのようなことを絶対に許さない。
-アンジェ-


「彼」(おそらくこれは単独の存在でない)が何を意味するか、多くの方が分かるかと思います。
ベスランの崩壊兵器テロ以降、過去を捨てたアンジェにとってウィリアムの行いは到底許されるべき行為ではなかったのでしょう。だからこそ、ベオグラード、パルティスキ、そして東ドイツといった地でウィリアムの陰謀阻止を試みてきました。
しかしその動きは「彼」にとって不都合であり、想定範囲を超えたイレギュラーである、だから見捨てろ。
……グリフィンの発言はそう捉えられておかしくありません。


新ソ連によって異国の地に送り込まれ、ボロボロになりながらも理想のために働いた彼女を待っていたのは、旧体制を守ろうとする国家からの切り捨てだった……
これは国際旅団結成~解体までの流れと酷似してる、そう私は考えてしまいます。



……そして考察はここで終わりません。
最初に書いた文はエンディングの一番最後に表示されました。
つまり、あの文はこれからの少女前線ストーリーを暗示しているとも捉えられるのです……




終わらない指揮官の悪夢

今イベでは、最終的に指揮官はアンジェの救出を選択しました。
彼は「過去に形成された体制」でも「未来への希望」でもなく「現在」を。
今、己が手で保護でき、維持できるものを救おうと決意したのです。



しかし、少女前線2のプレスリリースで明かされた指揮官像はそれとはまるで違った印象を受けます。
少女前線2 指揮官
https://www.4gamer.net/games/548/G054848/20211029143/ より引用

・人格が強めに、ダーティーに変貌した
・「自分はもうあの頃の指揮官ではない」


まるで何か夢破れたような、または何かに絶望しながら生きてるような、そんな印象を受ける記述です。


更に「逆コーラップス・パン屋作戦」ではロクサット連盟側の登場人物としてウィリアムという存在が出てくることが確定しています。

※デモ版ストーリー中に「ウィリアム」を指すシーンあり

このことから「彼」の目的=ロクサット派によるウィリアムの制御は達成されたと同義であり、同時にアンジェや指揮官の試みは失敗に終わったと推測できます。



つまり指揮官、アンジェの望みは叶えられなかった。
ロクサット派は彼らを助けず、彼らは「現在」を守ることが出来なかった……
そしてその経緯が4部ストーリーで明らかにされる。
ED文章から、私にはそう読み取れるのです。




……国家の思惑によって作られた国際旅団、そこに入った人々は自分の理想を信じて戦いました。
しかし帰るべき場所、祖国と歌われたマドリードは陥落し、最後は友邦と思っていた国家自身に裏切られる形で最後を迎えることとなります。
前線作中でも法人組織としてのG&Kは既に消えています。そして指揮官たちにはどのような未来が待ち受けているのでしょうか……