「火を盗もうとする欲望こそ、人の持つ原罪である」
1992/9/11 反遺跡開発グループ「パンドラ」のテロ声明文



※以下の説明は以前別記事で解説した内容が前提となっております。
過去の解説記事を読んでおくとスムーズに理解が進む・・・かもしれません。







・前史:
2030年の北蘭島事件発生後、世界各国は己の生存のみを考えた独善的行動を取り続けた。
この状況下、国連(UN)に国家間の争いを調停する能力はもはや無く、それはこの事態でリーダーシップを発揮するべき遺跡開発部門も同様だった。

2033年、UN遺跡開発部門ニューヨーク本部職員は米政府に拘束され、国外への追放勧告を受ける。これは事実上、国連組織としての解体を意味していた。
ここに至り、遺跡部門は残された物資と人材を南極地下遺跡に集め人類滅亡に備えた「方舟」とする「ビーコン計画」を発令。
世界中の優秀な科学者、富裕層を南極へ疎開させようとした。

だがしかし、一部職員はこの計画を人類に対する裏切りと非難。数ヶ月前に亡くなった「メーデ・ロクサット」の意志を継ぎ、残された人類を救済すべく新たな計画を考案した。それこそが「プロメテウス計画」である。




・プロメテウス計画概論:
計画目標は人類の救済。しかし流石に全人類を救おうというお花畑な内容では無い。
当時の世界情勢を鑑みた上で彼らは大きく2つの方針を掲げた。

・起こりうるであろう第3次世界大戦被害の最小化
・ロクサットの教義に基づく世界統一政府の樹立


ロクサットの予言通り国家間の争いは激しさを増しており第三次世界大戦は必ず起こりうる、ならばその大戦を可能な限り早く終結させ被害の最小化を図ること。そして大戦後の既存国家体制にガタが来ている時を見計らい「高度に自動化された世界統一政府」を打ち立てることで世界に秩序をもたらす・・・
これが計画の全容である。

計画は当初、ロクサットの教義に基づいて世界を救おうとする内容だった。
だが計画が進むにつれ目的と手段が入れ替わり、「いかなる犠牲を払おうともロクサット先生の教義を広めることが正義」と変容してしまう・・・




・新ソ連との関係:
プロメテウス計画に参加した人員はUN遺跡部門の一部のみであり、計画を遂行するには余りにも非力・・・そのためパートナーとなる国家を選ぶ必要があった。
彼らがパートナーとして選んだのは新ソ連だった。
理由は幾つかあるが、

・ロシア領内には冷戦以降ソ連が開発した遺跡が複数あり、過激派による悪用を防ぐためそれらを監視・制御する必要があった。
2032年のミンスク事変において新ソ連は遺跡の暴走を食い止めており、遺跡技術のもたらす危険性についても明るいと推測できた。
・当時新ソ連は米国との交渉に失敗、世界から孤立しており新たなパートナーを求めていた。

などとされる。
以上より彼らは新ソ連上層部へ接近、協力関係を結ぶことに成功する。(この裏には亡きロクサットとミハイル将軍に面識があったことも大きく影響したと思われる)
これ以降新ソ連へは遺跡技術の提供を含めたあらゆるサポートが行われた。この際汚染地帯への作業を行うため自律人形技術も提供され、鉄血工造ハーベル・ヴィトキンスへの支援も行われている。

また同時に新ソ連と敵対するであろう西側諸国への諜報戦が開始され、工作員グリフィンを始めとする多数の人員を欧州・米国に派遣。少なくない犠牲を被りつつ活動を行っていく。




・第3次大戦とその後・・・:
2045年、彼らの予想通り第3次大戦が勃発。
初戦の弾道ミサイル応酬、空・海での激戦の後、新ソ連は欧州方面に攻勢をかけ汎ヨーロッパ連合に大打撃を与えた。
このまま1年以内に大戦が終結するかと思われたが・・・2046年、それまで沈黙を保っていた米国が欧州・アフリカ・極東へ同時上陸作戦を決行。戦争早期終結への道は絶たれた。
以降5年間、新ソ連と西側諸国による泥沼の戦いが続いていく・・・が、多数の戦術人形を投入した新ソ連軍は2050年に南部イタリア戦線を突破、以降ソ連優位のまま戦争は終結した。
結果的にWW3被害の最小化には失敗したもの大戦は新ソ連勝利に終わる。

戦後西側諸国の体制が脆弱になった隙を逃さず、彼らは再度工作員を派遣。
これによりロクサット主義は急速に広まっていき、欧州を統治する「汎ヨーロッパ連合」はロクサット主義国家として生まれ変わる。
そして2062年、新生国際連合が設立。これは世界統一政府構想実現への布石となった。
彼らの目指したロクサット主義国家の実現は、もはや秒読み段階となっている・・・




・パン屋との繋がり:
プロメテウス計画は最終的にロクサット主義合衆国連盟を生み出したが、もう一方のビーコン計画も数十年の時を経て南極連合を生み出すこととなる。
両者が後に戦争を引き起こすことはご存じの通り。
遺跡技術を統制することで世界平和をもたらそうとした組織の末裔が、その技術を巡って争うのも皮肉な話である・・・