「万事何事も上手くいく」…そうさ…わたし以外は皆、そうなんだろうな…
MuMu20190414005351






豪快な声の人形:

ハハハッ、そこにいるのはAKS-74Uじゃないか!
AKS-74U:
おおっ?!
あ、あんたは…
ノリの軽そうな人形:
いやーっ新年明けましておめでとう、74。
まぁ私たちにとっての新年じゃ無いけど、ひたすら酒を飲めるならどうでもいいわ!
豪快な声の人形:
全くだ!何日ぶりの酒になるんだか…
ああ?どうした、74U??
AKS-74U:
え、えぇと…その…し、新年、おめでと…
ノリの軽そうな人形:
何ブツブツ言ってるの?聞こえないわよ!
しっかり私たちの名前を呼んでちょうだい!
AKS-74U:
え?いや、わたしはちゃんと…言ったよ?
豪快な声の人形:
おうおう74U、先輩に対して、そんな態度はないんじゃないかぁ~?
ほら同志、ウォッカを飲めぇーい!
AKS-74U:
ああ、いや、わたしは…
(待って!この匂い…これはウォッカじゃなくて工業用アルコール?!)
ノリの軽そうな人形:
74Uさぁ、私たちと酒が飲めないって言うのぉ?
別に彼女みたいにとは言わないけど、一杯ぐらい飲みなさいよぉ。
AKS-74U:
うぅ…これを?…けど、これは…
真面目そうな人形:
2人ともそこまでにしておきなさい。
あんたたちが方々で騒ぐせいで、わたしはちょーっと忙しいのよ。
ノリの軽そうな人形
せっかくの休日なのよ、それにわたしはAK47が暴れないようしっかり見張ってあげてるの!
AK-47:
お前はそれを口実に騒ぎたいだけだろ、シモノフ!
大体今日は祝日だ!皆に酒を勧めるのは当然の行いだろぉ?
MuMu20190414004905
真面目そうな人形:
ごめんなさいね、AKS-74Uさん。クレイジーイワンが2人も絡んできて。
挨拶回りの途中かしら?もし良ければわたしと一緒に行かない?
シモノフ:
私たちはどうしろと?
真面目そうな人形:
宿舎に戻りなさい、ステンがあんたたちを楽しみに待ってるわ。
それから…92式も言ってたわよね、今晩、もしステンとAAT52に無理矢理酒を飲ませたら、あんたら2人を酒樽に沈めてやるわ。
シモノフ:
分かった、分かったわ、安心して下さい、親愛なる同志!
また後で会いましょうね教官どの!74Uも、じゃあね!
AK-47:
またな!時間があったら一緒に飲もうぜ!
AKS-74U:
シモノフもAK-47も明けましておめでとう、さようなら!


……
真面目そうな人形:

それで、これからどこに行くつもり?
AKS-74U:
次は…FAL達の宿舎だな。
真面目そうな人形:
どこに行けばいいか分かるの?
AKS-74U:
地図は持ってるけど…
真面目そうな人形:
けど彼女がどこにいるか、そしてどんな姿をしているか分からない…違うかしら?
AKS-74U:
え?それは…
真面目そうな人形:
わたしの名前、言える?
AKS-74U:
……
ふぅ、どこから見ていたの?
真面目そうな人形:
あなたがシャフトや91と通信してるのを聞いてたの。
AKS-74U:
(肩をすくめて)そっか…恥ずかしかったんだ、誰が誰だか分からないなんて…
マカロフ:
ちなみに、わたしはマカロフよ。
AKS-74U:
こんばんは、マカロフ。新年あけましておめでとう。
それと…ゴメン。以前重傷を負ったときメモリーが少し破損して、まだデータの更新ができてないんだ。
マカロフ:
ふぅ~ん?本当に?
あなた個人の問題だから別に詮索しないけど、同僚の見分けすらつかないんじゃ任務に支障が出るんじゃ無いの。
少なくとも、同じ宿舎で暮らす人形ぐらいは覚えておくべきじゃ無い?
AKS-74U:
わたしの配属される小隊は固定されてるし、同僚も少ないの。パイソンとかね。任務に合わせてデータを更新すればいいから。
マカロフ:
他に理由があるの?
AKS-74U:
まぁ、ね。大した理由でも無いんだけどさ。
マカロフ:
そう、まあいいわ。あなた自身の問題だし。
けど、今回だけはわたしが助けてあげようかしら?
AKS-74U:
え?マカロフ、あんた本当に噂通りの親切な人形なんだな。
マカロフ:
あなた1人じゃ何も出来ないじゃ無い。わたしは他人が恥をかくのを影で笑うような人形じゃ無いわよ。
ついてきて、わたしと同じように挨拶すればいいわ。


……
マカロフ:

57、明けましておめでとう。
AKS-74U:
57さん、明けましておめでとう!
MuMu20190414005100
FN-57:
あら、マカロフじゃない。そしてあなたは…74Uね?新年あけましておめでとう。
FALはまだ化粧をしてるから、わたしが代わりに皆をお出迎えしてるの。
マカロフ:
まだ化粧を?指揮官はM1911やトンプソンと一緒にいるらしいけど。
FN-57:
そうなのよ。今日こそ全力で攻めないと行けないのに。
とにかく、今夜はわたしの思い通りに出来るわね。ふふっ…
49、お祭り用のチョコを取ってきてちょうだい…ああ、最上段は取らないで、FNCがもう盗み食いしたから!
AKS-74U:
(この小隊、なんでか変人ばかりだな…)


……
マカロフ:

ネゲブ、明けましておめでとう。
AKS-74U:
ネゲブさん、明けましておめでとう!
MuMu20190414005120
ネゲブ:
おめでとう、2人とも。
いつも通りの格好でごめんなさい、私たち、今日の準備が出来てないのよ。
ガリル:
何言っとるんや、ネゲブ。
注文してた服が予定通り届かなかったからやないか。
ガリル:
タボールが速達費用をケチったからよ!
それはそれとして、簡単なおやつを用意したわ。食べてかない?
厳粛な声:
ネゲブ、またお客さんなの?
ネゲブ:
ちょっと待って、今一緒に行きます!明かりの準備をして下さい、UZIもすぐ行くから!
AKS-74U:
(準備できてないって言ってた割に手際がいいな…)
マカロフ:
今の声…新たな人形が小隊に配属されたの?
ネゲブ:
ふふっ、そうじゃないわ。正確に言うと…彼女はまた戻ってきたの。
さあ入って。紹介するわ、彼女の名前は…


……
マカロフ:

IWS、明けましておめでとう。
AKS-74U:
IWSさん、明けましておめでとう。
MuMu20190414005200
IWS:
あ、ああ!!
誰か訪ねてきたからみんなちょっと待って!
ゲパード:
ツモ。大三元、清一色、門前清。
グロック17:
がぁぁぁぁぁ~~!クソぉぉぉ!
SSG69:
あぁぁぁぁ~~っ!!!!!
ダメ、交代!交代よ!!
AUG:
手遅れです、SSG69。
マカロフさん、AKS-74Uさん、両名に忠告を。そのドアを越えて入らないように。
AKS-74U:
ああ…大丈夫、お土産を持ってきただけだから…
(もう何を見ても驚かないよ…)


……
マカロフ:

ホーク、明けましておめでとう。
AKS-74U:
ホークさん、明けましておめでとう。
MuMu20190414005233
マカロフ:
待って74U、ホークはあだ名よ。あなたはちゃんと名前を言った方がいいわ。
AKS-74U:
あっ?ごめんなさい、知らなくて…
97式散弾銃:
気にしなくていいさ、新年明けましておめでとう!
マカロフと、あんたは74Uだね!歓迎するよ!
64式:
2人とも、明けましておめでとうございます。ソーセージでもいかがですか?
97式散弾銃:
今日は年に1度の旧正月!
さあさあ、そんなとこに突っ立ってないで中に入ってくれ!おい56-1式、食べてばっかいないで隊長を呼んで来いよ!


……
AKS-74U:

ようやく抜け出せた…
お土産をようやく配り終えたと思ったら、それ以上に腹が重い…
マカロフ:
これで任務は終わりかしら?
AKS-74U:
ああ、目標は十二分に達成できたよ。91とシャフトも喜ぶだろうさ。
マカロフ:
あなた、2人のためにこの任務を?
AKS-74U:
わたしはあなたみたいに心の広い人形じゃ無いよ、教官先生。
ただ仲間のためにやっただけさ。
マカロフ:
データ更新をしてないのも「仲間」のため?
AKS-74U:
……

AKS-74Uはしばらく沈黙し、やがて大きく息を吐いた。

AKS-74U:

…わたしのマインドマップには少し「違法な」記憶がある。
別に危険なわけじゃ無い。ただ…残しておくことができない記憶だ。
データベースに接続したらすぐに上書きされる、つまり…忘れてしまうんだ。
マカロフ:
以前行われた撤収作戦のログ?あなた、実戦はあれが初だったわよね。
確かにあの作戦は機密事項が多すぎるし、何よりグリフィンは今までと違って…制約が多い。
AKS-74U:
仕事は仕事よ。誰の責任でもないさ。
それでも、わたしはこの記憶を残したい…そのためなら多少の対価も喜んで支払うつもりだ。
マカロフ:
その対価がどれだけのものか、あなたはもう理解してるはずよ。
今後、それがますます膨れ上がっていくことも。
AKS-74U:
うん…だから、わたしはみんなが羨ましかった。さっき出会った人形たちは、みんな今日を楽しんでた。
そう、わたし以外のみんなが…万事何事も上手くいってるんだ…
マカロフ:
誰もが常に幸せな訳じゃ無いわ。
今日会った人形達も、苦しいこと、悲しいことを経験して、それを乗り越えた上で今笑っているの。
みんなあなたと同じよ。ただ、あなたはそれを経験するのが少し遅いだけ。
AKS-74U:
じゃあ教官、あなたは何を経験をしたの?
マカロフ:
……
「別れ」
AKS-74U:

マカロフ:
別れとはどんなものか、分かる?
AKS-74U:
いや、分からない。
マカロフ:
「別れとは、自分の心の一部が死んでしまうこと」
AAT52はそう言ってたわ。
AKS-74U:
AAT52?
マカロフ:
わたしの同僚、一言でいうとバカよ。どこでこんな言葉を覚えたんだか…
けどあの娘は常に自分の言葉を持っていて、大体その内容は正しいわ。
…余りにも正しすぎて死にたくなるぐらい。
AKS-74U:
…今の内容、あなたも仲間と別れたの?
マカロフ:
そう。彼女は今、より危険な戦場で、それ以上に頼もしい仲間と共に極秘任務を遂行した。
まだ連絡は取ってる。けど…もうわたしと違う道を歩んでるの。わたしの言ってることが分かる?

…AKS-74Uは頷いた。

マカロフ:
変化は必ずしも悪いことじゃないわ。ただ、慣れるまで少し…時間がかかる。
だから恥ずかしがる必要は無いの。本当に恥ずかしいのは次に彼女と会ったとき、向こうは大きく成長したのにわたしが何も変わってないこと。これじゃあ何も得られない。
だから…あなたはどうしたいの?
AKS-74U:
わたし…?
へへっ……私たちは知らないうちに友達になってたのかな。
マカロフ:
74U、あなたはかなり性能のいいAIを持ってるわ。ほとんどの人形、人間…そして自分自身をも欺けるものをね。
結論を否定しても、それから逃げてもいい。けど「わたしは大丈夫」と自分の本心を騙してはいけない。
AKS-74U:
うん…
今理解できたよ、どうしてシモノフがあなたを「教官」と呼んでいるのか。
マカロフ:
ただのちょっとしたアドバイスよ。あなたならもっといい方法を見つけるはず。
AKS-74U:
見つけても、教えてあげないよ。
マカロフ:
これまでの発言を聞く限り、これは多分嘘ね。
まぁいいわ、わたしは先に帰るから。あのクレイジーイワン共が宿舎を粉砕してないか確認しないと。
あなたも早く帰りなさい、寒いほどエネルギー消費も増えるわよ。
AKS-74U:
うん、そうだね…
マカロフ、あとさ、
マカロフ:
質問はあと1つだけよ。
AKS-74U:
「死んだ」って思う…それはいいことなの?

…振り返ったマカロフの顔は照明の逆光でよく見えなかったが、笑っているようだった。

マカロフ:

一言で言えば…時にはそれも悪くないわ。




……

??:

あれ?あなたはAKS-74Uさんですか?


続く