アンジェリカの行方を知るため、唯一の手がかりとなる情報源を探します。私たちは指揮官と列車でベオグラードへ向かいました。

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・・・「有序紊流」から3ヶ月後

カリーナ:
指揮官様、本日の進捗状況はこちらになります。
指揮官:
ありがとう、お疲れ様。
カリーナ:
えへへ、指揮官様もお疲れ様です。ようやく、ここでの仕事にも慣れてきたみたいですね。
指揮官:
今日、何か変わったことは?
カリーナ:
変わり無しです。後方支援、修復、補給、のどかなニュース、お腹を壊した人形たち。
カリーナ:
どうして人形は特定食品のアレルギーを持つよう設計されてるのでしょう?IOPの技術者がこんな機能をつけた理由が分からないです、チューリングテストの一種なのでしょうか?
カリーナ:
そんなことより、仕事が終わったらカフェで何か飲みませんか?
…別に理由なんてありません、少しリラックスしましょうよ。この基地にはインスタントコーヒーしかありませんし、私たちも数ヶ月間外出を禁じられてますが…
カリーナ:
…ふふ、もちろん私がインスタントコーヒーを入れてあげますからね。

ピピッ

カリーナ:
あっ、通信が入りました。Bクラス暗号化チャンネル、ハベル氏です。
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ハベル:
指揮官、1日の仕事は終わったかな?
はは、中々仕事が終わらないようだったので直接通信したのだよ。
…これから2人だけで話をしてもいいかな?

わたしはカリーナを見た。

カリーナ:

…はい、カフェはまた今度ですか。
カリーナ:
いえ、自動販売機のコーヒーが飲みたいんですね。わたし、買ってきます!

…カリーナはスケジュールを抱えて部屋を出て行った。今部屋にいるのはわたしだけ…

ハベル:

そう緊張しないで欲しい、今日はデスクワークについての話をするわけではない。簡潔に言おう…
ハベル:
…観光旅行に行きたくないかね?


…翌日14:30、大陸間鉄道駅近くの路地にて

RO:

指揮官、今回のターゲットはこれですか?

RO635が受け取った画像を凝視してる。ベオグラードの繁華街を写した写真、ぼやけた男の横顔に赤い丸がついている。

RO:

…こんなぼやけた写真一枚で、この男を捜すのですか…
RO
あとこの男が情報源だとおっしゃいましたが、こいつが本当にアンジェリカの情報を持ってるのですか?

…1日前

ハベル:
我々の偉大な局長様が君に任務を下してから、グリフィンの輸送手段は全て破壊されてしまった。外出もできず鬱屈としてたことだろう。
ハベル:
だからこそ、この機会を手に入れるのにわたしがどれだけ苦労したか!もっと感謝していいんだぞ。
ハベル:
そう、君はこのチャンスを逃すわけにいかないのだよ。
…心配するな、ゆっくり話していこう。

ハベル:
局長から極秘に聞いたのだ、アンジェリカが南部の都市に現れる可能性が高いとな。
ハベル:
なぜあやつがそこに行くのか、目的は何なのか、わたしにはさっぱり分からん。
ハベル:
正直なところ、わたしだったらあの事件後安全局に戻って傷害手当とボーナスを要求するだろう。しかしあやつはそうせず、代わりに姿をくらました。
ハベル:
それでだ、これは君にとって大きなチャンスだと思ったのだよ。もしアンジェリカを見つけたら、局長が報酬としてヘリコプターの1つ、2つくれるかもしれない。そうすれば君も自由に外出ができる!
ハベル:
うん?どうやって彼女を探すのだと?もちろん準備をしておいたさ。わたしが手に入れた非常に重要な情報を送ろう。このサプライズに感謝しなさい!


RO:
指揮官、聞いてますか?

ROが持つ画像に目をやり、深いため息をつく。
…そうだ、このピンボケ写真一枚と情報源がいると推測される場所、これが手持ちの情報の全てだ。解決すべき問題に比べ、手がかりは余りにも少ない…
そして情報源を見つけたとして、彼がアンジェリカの情報を持っているかどうかも分からない。
…ハベル氏がわたしを捜索に向かわせたのも疑問だが…
昨日は真面目な話をしてると言い難かったが、彼が賢い人なのは間違いない。私たちを向かわせたのにも何か理由があるのだろう。
…今こんなことを考えてても仕方が無いな。

RO:
指揮官?
指揮官:
聞いてくれ、手がかりはこれだけだ。ひとまず目的地に向かいながら考えよう。
RO:
はい、そうですね。今写真を見てても何も浮かびませんし。
RO:
そういえば、ここに来るのは初めてです。基地周辺よりはマシな場所ですね。
RO:
以前別の鉄道でパレット小隊と移動したとき…あれは最悪の旅でした。いえ、列車は良かったのですが、隊員がうるさすぎて…
RO:
今回はマシな旅になると信じたいです、少なくともSOP2はAAT52よりマシなので。
RO:
しかし…あれから時間が経ちました…本当に、色々なことがありました…

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5ヶ月前、グリフィンと軍は共同作戦を実施した。目的は鉄血のエルダーブレイン、エリシャを確保し当該地域の鉄血暴動を完全に終息させる…そのはずだった。
しかし作戦中、軍の裏切りによって我々は危うく全滅しそうになり、クルーガーさんも不当に逮捕された。
軍の目的はエルダーブレインを確保するだけでなく、M4A1とエルダーブレインの関係を繋ぎ、何か危険な目的を達成することだったらしい。
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だがその計画は、ただ1つの崩壊液爆弾によって阻止された。
軍は多大な被害を受けて撤退、エルダーブレインとM4A1の所在は不明だ。

わたしは戦場で得た情報を整理し、幾つかの可能性を考えた。だが、果たしてこれが真実なのだろうか?
確認するすべなどないが、わたしやあの時戦場にいた人以外にも真実を求める連中がいるのは確実だろう。
崩壊液による汚染が瞬く間に広まり、戦いはすぐ終わった。
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その後、わたしは謎の白き勢力に捕えられた。
自らをニト(Nyto)と称した尋問官はわたしからアンジェリカとM4A1の情報を引き出そうとした。
わたしは、時に嘘を織り交ぜながら奴らと「お話」し…最終的に404小隊によって救出され、カリーナたちの援護を受けて新たなグリフィン基地へ搬送された。

事件の後、リベリオン小隊も404小隊も跡形もなく消え去った。まるで最初から存在しなかったのように。
IOP社長であるハベル氏の紹介でわたしは安全局局長のジェルリンスキーの依頼を受けることとなった…
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そしてアンジェリカ…かつてはグリフィンの指揮官、安全局のエージェント、そして現在逃亡を続ける反逆者を捜索しなければならない。

それが、今回与えられた任務だ…


RO:
その、指揮官…アンジェリカを見つけた後、どうするおつもりですか?
RO:
…申し訳ありません、してはならない質問でした。ただ何か助言をしたかったのですが…今回の任務について考えてたら、マインドマップに過負荷がかかってしまって。
RO:
1つだけ言わせて下さい、わたしは指揮官を信じてます。例えどのような決断を下されたとしても…
ああ、SOP2が帰ってきました。
SOP:
戻ってきたよ…あれ?この駅名物のホットドッグを買わないの?
RO:
こんなところで無駄使いをしないの、手持ちのお金は少ないんだから。
SOP:
ええーー!せっかく外出できたんだから楽しまないと、せめて戻ったとき自慢する用の写真を撮ろう!
RO:
基地の仲間と仲良くなれたみたいね。けど任務が終わったら、この写真も任務と無関係な視覚情報も全て削除されるわよ…
どこかに保存用のサーバーでもあるの?
SOP:
バナナでスキャンしたよ!
RO:
バ、バナナ?
SOP:
うん、黄色いものといったらバナナでしょ!ペルシカが改造してくれたおかげで、わたしの電子戦能力がとても強化されたんだ♪
RO:
そのダイナゲート…まだ持ってたの…ああ、見てるだけで目眩が……
SOP:
へへ、じゃあ見なければいいんじゃないかな。とりあえず、ROにもこの写真を送るね~
SOP:
だけど分からないよ、どうして正面から駅に入らないの?
RO:
SOP2、ここは民間用搭乗口なの、それが何を意味するか分かる?入り口に軍の兵士がいて、セキュリティシステムで改札の出入りを監視してる。
RO:
指揮官は既に指名手配されてる身だし、私たちは合法的な身分すら持ってない。検問所に足を踏み入れて3秒で軍のデータベースと照合され、その1秒後には軍用人形が私たちを地面に押し倒すでしょう。
SOP:
つまり、身分を偽造する必要があると…
RO:
少なくともデータベース上は誤魔化さないと…
RO:
さっき見つけたサーバーにウィルスを植え付ける予定よ。
こうすれば、搭乗時に身分証をスキャンされたときデータベース認証をスキップして、自動的に軍のデータベースへ偽造身分をアップロードできるの。
SOP:
さすがRO!そんなことまでできるんだ?!わたしにもやり方を教えてよ。
RO:
カリーナさんが事前に準備してくれたおかげよ…
RO:
これは基礎レベルの電子戦だから、動作原理さえ理解できてれば今のあなたもこなせるはずよ。
SOP:
んー…よく分からないけど、かっこいいね!
RO:
はは…そうだったわね…
RO:
では指揮官、始めましょう、サーバーへのハッキングを手伝って下さい。SOP2、あなたは周囲を見張ってて。

RO:
指揮官、駅のサーバーへ侵入しました。認証システムの抜け穴さえ見つければ、ウィルスを仕込むことができます。
RO:
公共システムへのハッキングは初めてですか?もしかして、緊張されてます?

罪悪感は少しあったがこれは仕方のないことだ、少しずつ慣らしていくしかない。私たちの環境は以前と大きく変わってしまったのだから。
以前やった電子戦と何も変わることはない。さあ、始めよう。




戦闘終了



…わたしの援護で、RO635は無事にウィルスをインストールした。
5分後、私たちは検問所へ向かった。まずはSOP2の番だ。

RO:
指揮官、安心して下さい。作戦は成功しています、ペルシカさんの作ったプログラムも完璧だから、問題などどこにも…
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兵士:
そこの人形、止まれ!
SOP:
え?わたし?
RO:
(何、まさかバレた?)
兵士:
そう!そこのお前!
RO:
(ここで戦闘を?けど、ここを切り抜けたところで列車には乗れない…どうすればいいですか、指揮官?!)
兵士:
手に持ってるのは電子ペットだろ。電子ペットも身分証が必要だ、認証無しに通過しようとするな!
SOP:
えぇ、ダメなの?こんな小さいし、体の中にしまえばペット扱いにはならないんじゃないかな?
兵士:
誰が口答えしていいと言った!この人形が!
RO:
あぁ…すみませんすみません、申し訳ありません、すぐにこれをペット登録しますから!

ROは急いでダイナゲート用の偽装身分を作った

RO:
なんでダイナゲートの為にこんな苦労をしなきゃなの…
兵士:
…登録済み電子製品…よし、行っていいぞ。次は注意するように。
RO:
はい、はい…分かりました…

2分後、無事列車に乗り、予約してあった指定席へ座った

SOP:
スゴい!このシートめっちゃフワフワしてる!指揮官のソファーみたいだ!
RO:
ちょっと静かにして。検問は通過したけど、車内の人にもバレないようしないと。なるべくおとなしくしてちょうだい。
RO:
さっきのは本当に終わりかと思った…2度とあんな経験したくないわ。
SOP:
だけど、この車両には私たち以外誰もいないよ?
RO:
乗客が少ないからかしら?情報によると、車両ごとにセキュリティ担当の人形が配置されてるらしいけど…
SOP:
うーん、人手不足なのかな?
RO:
そうかもね。以前の騒ぎからかなり経ってるし、軍もPMCの人員1人を捕らえるために車両毎24時間監視を続けるのは無理なのかも。
SOP:
ふーん、私たちを甘く見すぎじゃないの。前の事件で軍の作戦も失敗してたじゃん?なのにこんな体たらくなんだ。
RO:
けど、目的を達成するまで奴らも諦めないはずよ。
SOP:
わたしたちも諦めないよ!必ずM4A1を探し出すんだから!

…列車が動き出した。SOP2は興奮して窓の外を眺めてる。RO635はイヤホンを接続して自分の世界に入ったようだ。わたしは座席の電子雑誌を眺めてた。
ファッション、商業、そして地球では残り少ない観光地の写真でいっぱいだった。全て、わたしには縁のない世界だ…
そんな中、最新型民生用人形の広告ページが目にとまった。余りにも暇だったため、その人形が戦術人形として武器を持つ姿を想像し始めた。無駄に細部まで想像してたところ、ますます瞼が、重くなり…



RO:
…指揮官?指揮官?

どれくらい時間が経ったのだろうか、雑然とした夢を見ていたところ、ROに呼ばれて目が覚めた。

RO:
指揮官、先ほど目的地まであと30分で到着するとの放送が流れました。列車もだんだん減速してるようで…

…RO635はわたしが読んでいた電子雑誌を眺めると、怪訝な目つきでこちらを見た。

RO:
指揮官は、こんな趣味をお持ちだったんですか?
指揮官:
いや…たまたまこのページを開いてただけさ。
RO:
そうですか…こんな人形を見てるだけで眠れるぐらい落ち着いてるということでしょうか?
SOP:
ほら!RO、指揮官、あれは何!

わたしとROは外を見た。
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RO:
隔離壁と浄化塔…単語の頭に「ELID」を付ければどんなものか分かるでしょ。
SOP:
あれが浄化塔…スゴく大きい、まるで城塞みたいだ!
RO:
あれは比較的新型の55年式浄化塔ね。最下部を見て、移動用の無限軌道もついてる。
RO:
中和粒子を散布して崩壊液の放射性を除去し、同時にアーチ型の浄化ゾーンを作ることで汚染が都市内部に広まることを防ぐ…
こうすることで崩壊粒子とELIDの侵入を防ぐのよ。もちろん、合法身分のない人間も壁の内側に入れない。
SOP:
全部、都市を守るための設備なの?ここまでして守ってるんだ…
RO:
大都市だから、そう簡単に放棄できないのよ。
崩壊液汚染と第3次大戦から時間が経って、この都市は再び繁栄を取り戻してるの…私たちには全く関係ないことだけど。
RO:
けど部外者の私たちにとって、この都市は外の汚染地域以上に見知らぬ場所よ。多分、今回の任務も順調に進むと思えないわ…

列車は隔離壁内部の清掃軌道に入り、内部設備によって列車の外側が清掃されていく。
壁の外側と内側は完全に別世界だ、わたしがかつて持っていたパスではグリーンゾーンに入ることすらできなかった。文明世界に入ったものの、何故だろうか、漠然とした不安がある。

RO:
アンジェリカを探しだし、その後M4、AR15、そしてM16を見つける…
RO:
AR小隊がまた集まることはできるのでしょうか、指揮官?

わたしはROの目を見て軽く頷いた。失望させるわけにはいかない。
これは始まりに過ぎない、全てを所定の位置に戻すための第一歩なのだ…


11-1E 終